いつの間にか随分日が短くなった。午後になると日脚の速さが一層感じられる。
柔らかな光の中で、ススキが微かに揺れている。
崋山の紀行文(絵日記)『目黒詣』から俳句を一つご紹介。
煩わしい藩務、極貧の日々にあってこの秋の1日の目黒不動詣では忘れられない思い出となった。
時は紅葉の盛り、文政12年10月14日(陰暦)、崋山36歳。
(「秋の蝶」の「秋」は、「牡」と読む人もいる)
よくまあ、この日まで生きてこられたものだ。
今日は身も心も蝶のように軽やかに、心ゆくまで行楽を楽しもう。
字余りの上五「命ありて」に万感の思いが込められている。
ABOUT ME
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。
各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。
著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)