塩田冥々筆「ひとり寝し」句短冊
冨田鋼一郎
有秋小春
款記 「四明山人」
印 「丹青不知老至」「嚢道」
黄初平: 中国の神仙。杖で石を打って羊に変える術を持つ。
39歳から42歳までの三年間、蕪村は丹後に滞在して中国画の模写に努めた。これはその時代の作品。
着目するのはその描き方。和画では見られない撥ねや留めといった加圧部を作り、線の中に筆圧を変えることで、異なる質感(リズムや抵抗感)を生み出している。
衣の襞は太い刷毛を用いて大胆に描出。何と表現したら良いか、この若者の表情は普通の人ではない独特の雰囲気を漂わせている。
強く地面を踏み締める足指が実在感をもたらしている。蕪村の足指には「命が凝縮」していると言われる所以だ。
遊印「丹青不知老至(丹青、老に至るを知らず)」。
絵を描くことは身体が老いるのを忘れるほど最上であるの意味。杜甫の詩の一節。
因みに、同時期の伊藤若冲も同じ句の印を使用していた。若き彼らは絵を描く事が楽しくて仕方がなかったのだ。