絹本墨画着色
款記 「四明」
印 「朝滄」(白文朱文混合方印)
署名はないが、印章からは20代後半から30代前半に過ごした結城下館時代のものと判明する。
海棠の花が白から紅へ淡いグラデーションをつける。
俯いた花を下から覗き込む赤茶色の腹のジュウビタキ。
背中の丸めてしっかりと足指で枝を掴んで、自らの重みを支える。
花を啄む小鳥の一瞬の姿を永久に画布にとどめた。
衒いのない筆のタッチから小さな動植物にも優しい眼差しを向ける蕪村の性質がうかがえる。
輪郭からはみ出ないよう塗り絵のような塗りかたに少々生硬さが感じられるが、そこが若書きの所以である。
ABOUT ME
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。
各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。
著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)