骨董品

里村玄陳筆発句元旦・春草句懐紙幅

冨田鋼一郎
H27.0 x W42.0 (cm)

元日
 雪やけさ草木のうへの花の春
春草
 あさつゆに秋見ぬいろやはるのくさ

承応二年 法眼玄陳 印

歳旦句「元日」、春興句「春草」。両句ともに、新年を迎えて、あらたまった気持の中ですがすがしさがあふれ出るようだ。

元旦の朝、あたりの草木の葉の上にうっすらと雪が積もった。朝日に輝き、一面に白い花が咲き乱れたようだ。新年の改まった気分と重なり、春がここにもやって来たことを実感する、なんとすがすがしいことか。

朝露にしっとりと濡れた春草の葉。その何ともいえないこの清新な色は、秋には決して見られないものだなあ。

承応二年(1653)63歳春の染筆。
この作品の作成時期は、言葉あそびや滑稽を主眼にしていた。このような素直で平明な句があるのはうれしい。
可憐な春の草らしい絵をふたつあしらった和紙に、玄陳らしい柔らかな筆致で染筆されている。
現在のところ、「法眼玄陳」と記した連歌作品は、承応四年(1655)が古いとされているが、さらに2年早いという新しい発見である。

里村玄陳(さとむら げんち1591-1663)

江戸時代前期の連歌師。里村玄仍(げんじょう)の長男。画もよくし、和泉堺にすんだ。75歳。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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