渡辺崋山筆画稿「山水画」その1
冨田鋼一郎
有秋小春
陸夜様 支考
尚々さして御用無之候ハゞ
今日者高田へ御越不被成候由
今より御越あれかし
公用といひながらきの毒
あたら一日つぶれ申事ニ候
千万明日又一日のつぶれ
と大工の日数かぞへ申候。
九耳事御見舞ハ却而
遠慮とて書状参候間
御断、我等よりと被頼候。
夕食後何とぞはやく
御越まち入候。一歌仙
いたし度候。御連中
御隙次第五三人斗
御さそひ御尤ニ候。多人数ハ
座敷喰物等やかましく
存候
二一日
宛先の陸夜と差出人の支考のサインは右下に見える。
「歌仙を巻きたいから隙な人を誘い合わせて、ぜひこれからお越しください。お待ち申しております。」
今なら、携帯で済ます内容だ。300年前の書簡が残って、支考は苦笑しているだろう。
江戸中期の俳人。蕉門十哲の一。別号、東華坊・西華坊・獅子庵など。変名、蓮二坊。美濃生まれ。芭蕉没後は平俗な美濃風を開いた。