骨董品

倉田葛三筆「別路や」句短冊

冨田鋼一郎
H36.0 x W5.5 (cm)

別路や処を得たる夏木立 葛三

季語:夏木立(夏)

村はずれの辻であろう。ここでいくつかの隣町への分かれ道となる。
木立が暑い日差しを浴びて、広い木陰をつくって群れ立っている。
旅人たちが足の疲れを癒す格好の場所であろう。きっと茶店などがあったに違いない。

夏木立が「処を得て」立っていると表現することによって、分かれ道にある木立が人びとに親しまれ、心地よい場所であることが容易に想像できる。
思わず深呼吸したいような落ち着いた、穏やかな句である。
人びとは、思い思いの方向を選択して、人生の歩みを進めていく・・・。

広重の東海道五十三次の浮世絵の画題になりそうだ。

白雄、長翆と続く名門春秋庵の三世、葛三にふさわしい佳句。

倉田葛三 (くらた-かっさん 1762-1818)

江戸時代中期-後期の俳人。郷里の信濃で宮本虎杖(こじょう)にまなぶ。江戸にでて加舎白雄の門にはいり、常世田長翠の春秋庵をつぐ。晩年は相模大磯の鴫立庵にすんだ。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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