三枝惣太郎作「俳諧宗匠」ブロンズ
冨田鋼一郎
有秋小春
三日月といへる里なりける
山のたヽずまゐ川の流いと
めでたく木樵山か川の
うたに君は三夜の三日
月さまを宵にちらりと
見たばかりとなんうたひもどり行
(け)るに
此景色(誰)たれ三日月のはつざくら 青羅 印「山李」
季:春(はつざくら)
【三日月町】
兵庫県の南西部(西播磨地方)に存在した町。2005年佐用町・上月町・南光町と合併し、新たに佐用町となったため消滅した。千種川の支流、志文川に沿い、古くから因旛街道の要地。江戸時代には当初池田家姫路藩の領地であった。平福藩立藩後はその領地となり、その後山崎藩領、天領等を経て、1697年(元禄10年)、三日月藩が立藩。1万5千石の城下町として森家170年の治世の後、維新を迎えた。維新後は三日月県、姫路県(飾磨県)を経て兵庫県の所属となり現在に至る。
【三夜】 月の第3日の夜。また、その夜の月。三日月。
三日月の里の自然豊かな山々のたたずまいは申し分ない。桜並木で名高い志文川の流れはじつに清らかだ。木こりが山川の自然を詠んだ歌に対して、君は第三夜の宵闇せまるころ眉毛のような三日月を見たと言って戻っていった。これにこたえて、
この美しい山水のおもむきはいかばかりか。じつにすばらしい。今宵の三日月も日を重ねて満月へと満ちていくだろう。待ちに待った桜もようやく花をつけ出した。満開まで楽しみなことよ。
青羅発句集に「櫻」と題して、「月も山も其ほとり也はつざくら」についで載る。
加古川の故郷を愛でた句である。
江戸中期の俳人。播州姫路の人。芭蕉顕彰に努め、専門俳人として諸国を遍歴、蘭更・暁台・几董・月渓らと交わる。