短冊

森本沙鷗筆短冊幅

冨田鋼一郎
H36.0 x W6.0 (cm)

雲間ㇵ何処も日のあるさくら哉   沙鷗

季語:桜(春)
「雲間」は、「うんかん」。雲の切れ間。雨続きの中の晴れ間。

 
桜の満開どき、木のもとから見上げたものであろう。見遣った桜の先の空は曇天、花曇りだった。晴れてはいないが、花弁ひとつひとつが白く輝いて、あたかも雲の切れ間から青空がのぞいているようだ。
満開、みごとな花であることよ。「何処も」による強調が、この句のポイント。

 
桜の木の元から見上げることで思い浮かぶ句は、
「まさおなる空よりしだれざくらかな 富安風生」
「葉桜の中の無数の空さわぐ 篠原梵」

 
森本沙鷗は、高雅で煎茶を嗜み、笛を愛した風流人だった。その人柄は、短冊の字にも表れていると思う。
温雅で気品さえ感じられる。くしくも蕪村没年に生れ、その生涯は崋山(1793-1841)時代に重なる。
果たして沙鷗と崋山とでは、どちらが幸せな生涯だったのだろうか。

森本沙鷗(もりもとさとう1783-1843)

尾張名古屋の酒造業。町代を務める趣味人。士朗門。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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