渡辺崋山筆折帖「目黒詣」
冨田鋼一郎
有秋小春
少年行
酔ひつれて
雪駄鳴らすや
まつの内
紅葉 印
通りからは、バンカラの鳴らす下駄だけでなく、羽子板の羽のカンカンという音が聞こえてくる。松の内の風情にふさわしい。「羽子板の羽」が宙に舞っている絵の作者は、梶田半古。
『紅葉句集』には「少年行 酔つれて雪駄鳴らすや松の内」で所収。
明治の大学生は、将来を約束された特権階級。新年松の内、皆が新たな年を静かに祝う最中に、酒に酔った学生たちが雪駄を鳴らしながら練り歩く。きっとマントなどを羽織っていたのだろう。バンカラ 無礼講。実に騒々しい。当時は多少の無礼は多目に見てもらえた。自分が若かりし時を懐かしんでこの句を詠んだのだろう。
小説家。名は徳太郎。号は「縁山」「半可通人」「十千万堂」「花紅治史」など。物語の巧みさと艶麗な文章で、圧倒的人気を獲得、泉鏡花・小栗風葉・柳川春葉・徳田秋声らの逸材を出した。作「多情多恨」「金色夜叉」など。
明治大正期の日本画家。