北村季吟筆「柳糸随風」懐紙幅
冨田鋼一郎
有秋小春
あヽ花にふるや留守居の涙雨 紅葉
ちるそばに牡丹の魂の迷ふ哉 紅葉
秋の雨漏るや古駅のまくら元 紅葉
誰か見てや木葉はさみし山家集 紅葉
季語:花(春)、牡丹(夏)、秋の雨(秋)、木の葉(冬)
山家集:西行(1118-1190)の家集。
短冊染筆であるから、本人は若干気取っているのであろう。それにしても紅葉の字は、非常に繊細で神経質、筆致流麗すぎて判読が難しい。岩波書店『紅葉全集』によって判読した。
紅葉句からは蕪村の句を連想する。
ちるそばに牡丹の魂の迷ふ哉 紅葉
↓
ちりて後おもかげにたつぼたん哉 蕪村
誰か見てや木葉はさみし山家集 紅葉
↓
梶の葉を朗詠集のしをり哉 蕪村 (秋:梶の葉)
七夕の行事に七枚の梶の葉に和歌を書き、星を祭る。
小説家。名は徳太郎。号は「縁山」「半可通人」「十千万堂」「花紅治史」など。物語の巧みさと艶麗な文章で、圧倒的人気を獲得、泉鏡花・小栗風葉・柳川春葉・徳田秋声らの逸材を出した。作「多情多恨」「金色夜叉」など。