骨董品

尾崎紅葉筆「四季句短冊」幅

冨田鋼一郎

あヽ花にふるや留守居の涙雨  紅葉
ちるそばに牡丹の魂の迷ふ哉  紅葉
秋の雨漏るや古駅のまくら元  紅葉
誰か見てや木葉はさみし山家集  紅葉

季語:花(春)、牡丹(夏)、秋の雨(秋)、木の葉(冬)
山家集:西行(1118-1190)の家集。

短冊染筆であるから、本人は若干気取っているのであろう。それにしても紅葉の字は、非常に繊細で神経質、筆致流麗すぎて判読が難しい。岩波書店『紅葉全集』によって判読した。

紅葉句からは蕪村の句を連想する。

ちるそばに牡丹の魂の迷ふ哉  紅葉

ちりて後おもかげにたつぼたん哉  蕪村

誰か見てや木葉はさみし山家集  紅葉

梶の葉を朗詠集のしをり哉  蕪村 (秋:梶の葉)


七夕の行事に七枚の梶の葉に和歌を書き、星を祭る。

尾崎紅葉(おざきこうよう1867-1903)

小説家。名は徳太郎。号は「縁山」「半可通人」「十千万堂」「花紅治史」など。物語の巧みさと艶麗な文章で、圧倒的人気を獲得、泉鏡花・小栗風葉・柳川春葉・徳田秋声らの逸材を出した。作「多情多恨」「金色夜叉」など。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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