日々思うこと

清く正しいお付き合い

冨田鋼一郎

銀行の担当者が交代挨拶に来たとき、必ず新担当者に言うことがある。
「これまでのように、清く正しく真っ白なお付き合いしましょう」。

相手は目を丸くする。

意味することは、「あなたから元本割れリスクのある商品は買いません、確定利付商品のみのお付き合いですよ、ギャンブルはしませんよ」、ということ。

今の銀行は保険・証券の垣根が相当低くなっている。そもそも銀行、保険、証券の仕事は哲学が違う。それなのに相互乗り入れが進み、銀行が元本割れ商品も扱っている。

特に「仕組み型新金融商品」と名の付くものは要注意!マーケットがどちらに変動しても銀行は負けないよう「仕組んだ」ものだ。

銀行員は確定利付の世界の「清く正しい真っ白」な仕事に、元本割れリスクのある「黒い」証券会社の仕事が混じり込んで、かなり「グレー」になってしまった。

「ギャンブルしませんか。ただし、あくまで自己責任ですよ」と言われて銀行相手に勝負しますか?!「真っ白」だと思っていた銀行員から「自己責任」と言われたくない。

私としては「グレー」になった銀行員を相手に預金(確定利付の真っ白)と投信(ギャンブルの黒)をごっちゃにしたくない。そして、あの銀行員から損をさせられたという思いを抱きたくない。

ということで、自分の自己防衛(精神的平安)のため、「白い」銀行担当者と「黒い」証券担当者を峻別している。

来月から新NISAが始まる。政府は、一億総ギャンブル化を目論んでいる。日本はすでにカジノ漬けだと思う。

今の銀行員は、実体経済とかけ離れた金融市場を相手にした仕事に生きがいを感じているのだろうか。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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