骨董品

内藤丈草一座半歌仙草稿(元禄13年秋)

冨田鋼一郎


深田嘯風子亭
河風や秋をもミ出す藪構  丈草
唐黍おこす夕月の影    嘯風
踊子の後あふぎにさし寄て 魯景
飲ほど青く青きほど飲   友然
馬かへバそこらあたりがほめそやす  風
すぐに暮たる白雨の空   草
ウ裸身を風に吹るヽ湯殿口  細石
主もいつしか連になる旅  景
  (以下略)

元禄13年は1700年、丈草35歳当時の半歌仙。

芥川龍之介が蕉門の作家の中で、最も推重していたのが、内藤丈草だ。「蕉門の竜象の多いことは言うを待たない。しかし誰が最も的々と芭蕉の衣鉢を伝えたかと言えば恐らくは内藤丈草であろう。」

丈草の佳句をいくつか。

・幾人(いくたり)か しぐれかけぬく 瀬田の橋
一読、広重の浮世絵の世界を思い浮かべた。
・まじわりは 紙子の切を 譲りけり
・何事ぞ 鰌のにげし 根芹かな
・くろみ立 沖の時雨や 幾所
・大はらや 蝶の出てまふ 朧月
・うづくまる 薬の下の 寒さかな
・やねふきの 海をねぢむく 時雨かな

内藤丈草(ないとう じょうそう1665-1731)

江戸中期の俳人。蕉門十哲の一人とされる。姓は各務(かがみ)、別号、東華坊、獅子庵など。美濃の人。1690年ごろ芭蕉の門に入り、《続猿蓑》の選を助ける。美濃派を興して蕉風を継ぎ、諸地方を行脚して自家の俳諧を確立、宣伝に努めた。平俗な機知に富んだ作風で、俳論にも優れる。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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