作品・本・人物紹介

蕪村の落款ワンポイント解説(その10)

冨田鋼一郎

遊印 「溌墨生痕」(はつぼくせいこん)

(白文方印)
21mm x 22mm

筆をもって心を込めて生き生きと描いておれば、それが自分の生の証しである。

蕪村の人生後半で使用した唯一の遊印。

晩年の傑作が多いいわゆる「謝寅(しゃいん)書き」時代まで用い続けた。

国宝の「十宜図」など自信作にこの遊印を押した。

学んだことを自家薬籠中の物とすべく貪欲に画嚢・詩嚢に蓄えていこう。真摯に画業に打ち込む蕪村らしい自戒とストイックな気概を込めた文句である。

蕪村が生涯に使用した遊印は次の四顆のみ。
⭕️関東遊歴時代 「男子生有四方志」
⭕️丹後時代 「山水自清言」「丹青不知老至」
⭕️上洛後から晩年まで 「溌墨生痕」

黒い影印は、講談社『蕪村全集』印譜に掲載されているもの。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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