新聞雑感
冨田鋼一郎
有秋小春
さながら生きた「昭和人物事典」
小林勇を知ったのは、岩波茂雄伝『惜櫟荘主人 一つの岩波茂雄伝』、幸田露伴伝『蝸牛庵訪問記』を読んだこと。著者の強烈な個性に圧倒された。
単なる伝記ではなく、実際に接した人でなければ書けないエピソードで綴られているので、読者はその人物を知っているかのような錯覚に陥る。
出版の仕事を超えた付き合いの中から人物の人柄を捉えることにかけては他の追随を許さない。
以下、追憶文『彼岸花』に採り上げられた人々を列挙した。さらにこれらの人々に連なる人々がふんだんに登場する。
名取洋之助、中谷宇吉郎、長与善郎、小宮豊隆、小泉信三、寺田寅彦、安井曽太郎、狩野亮吉、児島喜久雄、野呂榮太郎、永井荷風、小泉丹、兼常清佐、鈴木大拙、幸田露伴、高見順、佐々木茂策、渋沢敬三、岡田武松、高村光太郎、初代仲村吉右衛門、馬場一路居士、斎藤茂吉。
いずれも岩波書店と関わりのあった昭和の知識人たちだ。