東ドイツ記念通貨5マルク白銅 未使用ロベルト・コッホ生誕125年記念
冨田鋼一郎
有秋小春
初午やその家々の袖だゝみ
はつむまや物種うりに日のあたる
雁ゆきて門田も遠くおもはるゝ
あけぼのゝむらさきのまくや春の風
野ばかまの法師が旅やはるのかぜ
夜半の句 月渓 印
初午(春)2月の初めの午の日。この日行われる神事をもいう。
初午に身なりを整えて出かける。どの衣裳にも、それぞれの家なりの勝手な流儀により袖畳みの跡がついている。いかにも庶民の祭りらしくほほえましい。
初午の日の稲荷神社は参詣の人で大賑わい。その喧噪をよそに、作物などの種を売る露店には春の日が静かに差している。雑踏の中の穏やかな春景。
雁行(春)帰雁。春になり雁が北に帰ること。
今まで門前の田で餌をあさる雁の姿に親しんできたのに、春のなって北へ飛び去ると、門田も寂しく心に遠い眺めになった。
春の風(春)春風駘蕩というように、暖かく柔らかに吹く風。
王朝の才女が言ったように、春の曙は紫の幕のように雲がたなびき、やがて春風が静かにその幕を開け夜明けの舞台を現してゆく。
本願寺の役僧か、野羽織に野袴を着けて旅をしている。いささか異様なその装束の裾を、からかうように春の風が吹く。
呉春(月渓)染筆による蕪村の春の5句。「初午」2句、「雁行」1句、「春の風」2句。
師蕪村のなまめかしい書体を彷彿とさせる月渓の書。画人らしく、句の配置を微妙に違えることによって、暖かくなった春の風にこころも靡いてくる。蕪村は師であるから本来「夜半翁の句」と記すところだが、ここでは「夜半の句」としている。身分の高い人物へ献じたものか。
江戸中期の絵師。