作品・本・人物紹介

人物表情(その3)蕪村と崋山

冨田鋼一郎
蕪村「晋我翁図」顔部分 
崋山「松崎慊堂像稿」

今回は、老人の顔の表情を比較してみよう。

早見晋我(老号、北寿)(1671-1745)は、下総結城で酒造業を営む素封家。晋我を悼んだ蕪村詩「北寿老仙をいたむ」で有名。

20代後半の蕪村は、晋我の最晩年3年間大変世話になった。蕪村にとって45歳の差がある晋我は慈父とも言える人物。

目を細めて笑みを含んだ穏やかな表情からは、身も心も裕かで幸多き晩年だったことが窺える。敬愛の情を込めて描いた。

一方、崋山は、尊敬する儒学者、松崎慊堂(1772-1844)を描いた。
これは頭部の画稿。(『定本渡辺崋山』郷土出版社より)胡粉の混じった代赭や淡い墨の陰影が生かされていて、洋風画法を学んだ跡がある。
慊堂は崋山が後年巻き込まれた蛮社の獄の際に、身を賭して崋山救済の嘆願書を老中に差し出した。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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