骨董品

若き蕪村の墨画「芭蕉行脚図」

冨田鋼一郎
H42.7 x W30.0 (cm)

紙本墨画
款記「寛延庚午画四明山人」
印 「四明山人」(朱文方印)

枯芝に満ちた見つけたり梅花 素旭

絵は、落款から20代後半から30代前半に過ごした結城下館時代のものと判明する。

寛延庚午は、寛延3年(1750)。蕪村が関東遊歴を引きあげて上洛する前年、35歳の画である。(賛句を除く)

宗匠頭巾を被り、頭陀袋を提げて、笠と竹杖を手に、どこかうつろな眼で俯き加減に歩を進める行脚僧。
これは芭蕉の行脚姿ではと言われているが、もしかしたら28歳で出家姿で行った奥州大行脚の自身の姿なのかもしれない。

賛句は素旭のものだが、師蕪村自身による染筆であるのは間違いない。生き生きとした力強い字だ。

「芭蕉行脚図」は、「安永三年春帖」(1774)に掲載された16枚の挿絵の原画一枚である。
落款記と賛句の字体の違いが25年の時の隔たりを告げる。
どうして25年も前に描いた画を安永三年春帖編纂に際して持ち出したのか。素旭とはいったい何者か。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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