小林勇のエッセイ(その5)随筆「硯』(『小閑』より)
冨田鋼一郎
有秋小春
署名 「浪華四明」
印
「四明山人」(朱方印))
2.0cm x 2.0cm
「淀水」(白文方印))
1.8cm x 1.8cm
蕪村の若い時の画号「四明(しめい)」。「四明」は比叡山四明岳から取ったもの。
同様に、「淀水(でんすい」)は淀川。
淀川の辺りの摂津国東成郡毛馬村で生まれた。
どちらも若い頃、関東遊歴時代に使用し始めている。
この二つの印から推測されることは、20歳ごろに江戸に下った蕪村が、「私は皆さんと違い、比叡山や淀川のある所の出ですよ」と主張したかったのだ。
署名にも、「浪華四明」とわざわざ「浪華」と添えているのも同じ動機。
この頃の作品では、この二つの印を最も頻繁に使っている。
黒い影印は、講談社『蕪村全集』印譜に掲載されているもの。