日々思うこと

漱石が見つけた言葉

冨田鋼一郎

漱石が見つけた言葉「自己本位」は、日本人の財産である。

(講演『私の個人主義』から)

講演「私の個人主義」は大正3年、亡くなる2年前に学習院の学生向けに行われた。
自らの半生について振り返った貴重な講演録。漱石さんの「個人主義」は、「利己主義」とは違う。

イギリス留学の最大の収穫は、「自己本位」という四文字に出会ったこと。

「私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。」

「私は多年の間懊悩した結果、漸く自分の鶴嘴をがちりと鉱脈に掘り当てたような気がしたのです。」

この四文字を土産に帰国したからこそ、偉大な作家になれたのだと思う。

「自分勝手」「利己主義」ではない!
「自己本位」! 「自己本位」!

「私の個人主義」の講演録を残しておいてくれたおかげで、100年後の私たちも漱石さんの声を直に聞き、財産とすることができた。

[クレマチス]
[ツユクサ]

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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