骨董品

柏原瓦全筆「うば玉の」短冊

冨田鋼一郎
H35.8 x W6.2 (cm)

うば玉の露さだまつてほとヽぎす 瓦全

季語:露(秋)
夏の東雲(しののめ)。昨晩は風のない晴れた夜だったのだろう。野原のひあふぎの広い葉にたくさんの露がついている。予想通り露がたくさん降りたことよ。遠くの樹林からはほととぎすの甲高い鳴き声が響き渡ってくる。東の空が明るくなってきた。きっと今日も暑い日となることだろう。

短冊は、可憐な草をあしらったもの。

語釈
うば玉:射干(ひあふぎ)、山野に自生すいるアヤメ科の多年草。葉は広い剣状で、生え方が檜扇を開いたよう。盛夏のこと一茎を伸ばし、分枝した先に黄赤色で内部に紅点の多い花を開く。

「ほととぎす」は、鳥の時鳥ではなくて杜鵑草(ユリ科の多年草)かもしれないこと。

また、「うば玉の」は、射干(ひあふぎ)ではなく、「露」にかかる枕詞かもしれないこと。
ただし、枕詞の「烏羽玉(うば玉)の」は、辞書によると、「黒」「夜」「夕」「月」「暗き」「今宵」「夢」「寝」などにかかるとあり。「露」にかかるとは記載されていません。

柏原瓦全(かしわばらがぜん1744-1826)

江戸時代中期-後期の俳人。京都の扇商。俳諧を五升庵蝶夢に、国学を伴蒿蹊にまなぶ。「徒然草」の「馬のきつりよう」の謎をはじめて解いた。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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