日々思うこと

椿の花

冨田鋼一郎

○落ちざまに虻を伏せたる椿かな 漱石

椿の花がうつ向きに落ちて、虻が花に伏せられた様子
漱石は椿の花を小説のなかに上手に小道具として使っている

王維 「田園楽」 六言絶句

 桃紅復含宿雨
 柳緑更帯春煙
 花落家僮未掃
 鶯啼山客猶眠

桃の紅にして復た宿雨(しゅくう)を含み
柳の緑にして更に春煙(しゅんえん)を帯ぶ
花落ちて家僮(かどう)未だ掃わず
鶯啼いて山客(さんきゃく)猶眠る

 宿雨: 宵越しの雨
 春煙: 春のもやや霞の類い
 家僮: 少年の召し使い
 山客: 山村の客人(王維自身)

王 維(『旧唐書』によれば699年 – 759年、『新唐書』では701年 – 761年)
8世紀、盛唐の高級官僚で、時代を代表する詩人。また、画家・書家・音楽家としての名も馳せた。字は摩詰、最晩年の官職が尚書右丞であったことから王右丞とも呼ばれる。

李白が「詩仙」、
杜甫が「詩聖」、
王維は「詩仏」。
韋応物・孟浩然・柳宗元と並び、唐の時代を象徴する自然詩人。王維はその中でも際だった存在 “南画の祖”でもある

☆☆☆

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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