作品・本・人物紹介

芭蕉(その4)「幻住庵記」の「此一筋」

冨田鋼一郎

芭蕉47歳、「おくのほそ道」の旅を終えた翌年、元禄3年(1690)、旧暦4月~7月までの4か月を国分山の幻住庵に暮らし「幻住庵記」を書く。 

俳文「幻住庵記」は、「猿蓑」所収、
芭蕉生前に公表した唯一の文章

庵の所在と由来
入庵の経緯
庵の眺望
庵の調度と日常生活
境涯の回想と現在の心境

最後に、芭蕉の生涯と生活からにじみ出た人生観を率直に語りかける

幻住庵記を入れた『猿蓑』の刊行が「おくのほそ道」のさらなる推敲を促したといえる

☆☆☆☆

つらつら年月の移り来し拙き身の科(とが)を思ふに、ある時は仕官懸命の地をうらやみ、一たびは佛離祖室の扉(とばそ)に入らむとせしも、たどりなき風雲に身をせめ、花鳥に情を労じて、しばらく生涯のはかりごととさへなれば、つひに無能無才にしてこの一筋につながる。、、(中略) いづれか幻の栖(すみか)ならずやと、思ひ捨ててふしぬ。

 先づたのむ椎の木も有夏木立

@@@@

「この一筋」「此道」とは、俳諧一筋の道

○此道や行人なしに秋の暮 芭蕉
 ↓
○門を出れば我も行人秋の暮 蕪村

詩人としての孤独を自覚する人たちが時を越えてつながり合おうとする

「連衆」 句会で席を同じくする人々
「真の連衆心」
場だけでなく、時空を超えて心を同じくしようとする

[クヌギ]
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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