骨董品

清水比庵筆「みんなみの」歌自画賛

冨田鋼一郎

みんなみの山のまろきに立つ雲のあした夕べに楽有よ
 比庵 印「比庵」

松を画面いっぱいに描く。幹と枝のしなりは上り龍のようで、生命力にあふれている。晩年になるほど円熟味を増してくる。この瑞々しさはどこから来るのだろう。歌をつくり、絵筆を執り、書を認める日々。自分を自由に表現できる詩・書・画に打ち込むことのできた生涯は、堂々たるものだ。比庵芸術はその人柄か今良寛と言われ多くの人に慕われている。

「あした夕べに」という言葉で、比庵の有名な次の句を思い浮かべる。

富士の山見ゆるところに住む人はあした夕べに楽しかるべし 比庵

清水比庵(しみず ひあん1883-1975)

歌人。本名清水秀。号は他に匕舟、比舟、比安。詩・書・画の三芸に秀で、今良寛といわれる。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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