ジェームズ・ワトソン(97)死去

2025年11月8日 日経
1953年、生物の設計図が書き込まれたDNAの二重らせん構造を発見し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した米国の分子生物学者、ジェームズ・ワトソン(1928-2025)が11月6日、東部ニューヨーク州のホスピスで死去した。97歳だった。
英国で故フランシス・クリック(1916-2004)と成し遂げたDNAの構造解明は20世紀の科学の中で最重要の発見の一つ。遺伝情報の解読や機能の特定、医療・農業応用へと続く生命科学の発展の基礎となった。
1953年、エックス線を使った解析などでDNAが糖とリン酸のはしごをねじったような構造を持っていることを発見し、英科学誌ネイチャーに発表。この成果で62年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。
☆☆
[エピソード]①
【2014年12月5日 AFP】
DNA構造解明の米科学者、ノーベル賞メダルを5.7億円で売却
米遺伝学者ジェームズ・ワトソン博士がDNAの二重らせん構造を解明した功績で1962年に受賞したノーベル賞のメダルが4日、米ニューヨークで競売に掛けられ、予想を大きく上回る475万ドル(約5億7000万円)で落札された。
ノーベル賞受賞者が存命中にメダルを売るのは初めて。DNAの二重らせん構造の解明は、20世紀の科学史上最も重要な発見の1つといわれている。
競売大手クリスティーズが主催したオークションには、ワトソン博士がノーベル賞の晩餐会で行った演説用の5ページの直筆草稿や、ノーベル賞会議に参加した際の46ページの訂正入り原稿も出品され、それぞれ36万5000ドル(約4400万円)と24万5000ドル(約2900万円)で落札された。
多くの著作でも知られるワトソン博士だが、黒人の知能を疑問視する発言(後に謝罪)をして以来、科学界からは距離を置かれた状態にある。今回の競売で得た収益の一部は、学生生活を送ったシカゴ大学と勤務したケンブリッジ大学クレアカレッジ長年会長を務めたコールド・スプリング・ハーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratory)に寄付する意向だ。(c)AFP
[エピソード]②
競売は当時話題になったが、その落札数日後の後日談がさらに衝撃的だった
結果として、ジェームズ・ワトソン博士は、メダルを手放すことなく、5億円を手にすることになった
【12月11日 AFP】ロシア一の富豪、アリシェル・ウスマノフ氏が9日、わずか数日前に470万ドル(約5億7000万円)で競り落としたノーベル賞のメダルを、出品者である米遺伝学者ジェームズ・ワトソン博士(86)に返還する意向を表明した。
DNAの二重らせん構造を発見したことで1962年にノーベル賞を受賞したワトソン博士のメダルは、今月4日、競売大手クリスティーズがニューヨークで行ったオークションで匿名の購入者が落札していた。クリスティーズによると、存命中にメダルを売却したノーベル賞受賞者は、ワトソン氏が初めて。
鉱山、鉄鋼、通信などの事業を手掛けるウスマノフ氏は自身が率いるロシアの投資会社、USMホールディングスを通じて発表した声明で、落札者は自分であると名乗り出たうえで、メダルを返還する考えを明らかにした。
ウスマノフ氏は、「極めて優れた科学者がその功績によって得たメダルを売却するなどということがあってはならない」「メダルは、それを手にする価値がある人物の手元に置かれるべきだ」と述べている。

