骨董品

飯島珈涼尼「妻恋鹿」自画賛幅

冨田鋼一郎
H98.5 x W19.0 (cm)

妻こひや鹿も紅葉の山を見ず  草婦人珈涼 印

季語:紅葉(秋)

季節も秋が深まってくると、側にいない連れが恋しくなる・・・
雄鹿も、見事にもみじに染まった山を見もしないで、愛しい雌鹿を探しまわっていることだなあ。

妻恋、鹿、紅葉の取り合わせは、いわゆる月並みの代表といえるが、「・・・山を見ず」としたところに読者の意表を突く。
「二兎を追う漁師山を見ず、、、」も思い浮かべる。

後ろを振り返っている雄鹿の絵。メス鹿を探す可愛らしく寂しそうな姿、女性俳人らしい句を添えて、優しい雰囲気をもたらしている。

虫喰いの傷みがあるが、飯島珈涼尼の自画賛は、それほど多くない。

飯島珈涼(いいじま かりょう1696‐1771)

俳諧師。飯島氏。別号、草婦人。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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