松村呉春「三俳人句画讃」
冨田鋼一郎
有秋小春
この騎馬人物は、馬を停めて、大きな空と山を見上げながら、漢詩の世界が脳裏を次々とよぎったのではなかろうか。
どのくらいこの姿勢でたたずんでいたのか。「毅然として動かざること、山の如き」
目の前の山を悠然と見上げていると自然とひとつになったような気持ちになる。唐詩人との対話がはじまる。
王維 「送別」 五言古詩
下馬飮君酒
問君何所之
君言不得意
歸臥南山陲
但去莫復問
白雲無盡時
馬より下りて 君に酒を飲(の)ましむ
君に問う 何(いず)くにか之(ゆ)く所ぞと
君は言う 意を得ずして
南山の陲(ほとり)に帰臥(きが)せんと
但だ去れ 復(ま)た問うこと莫(な)からん
白雲尽くる時無し
多くを問わず、静かに見送ろうとする姿に、詩人の友人への心配りと愛情、そして友人の隠遁生活への励ましなど、無尽の思いを感じ取ることができる詩です
「網川に帰りて」
悠然遠山暮
獨向白雲帰
悠然たり 遠山の暮れ
独り白雲に向って帰る
「終南の別業」
行到水窮處
坐看雲起時
行きては水の窮まる処に到り
坐しては雲の起る時を看る