突き抜けるような青空に木枯が吹き抜ける
冨田鋼一郎
有秋小春
ヘミングウェイは、作品を書き上げると、ろくに読み返しもしないで、銀行の貸金庫の中に入れてしまったそうだ。
だいぶたってから、それを取り出してきて、手を入れる。それでもまだ気に入らないと、また貸金庫へ戻す。こういうことを繰り返して、これでよしとなると、出版社へ渡したそうだ。
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[推敲]
文章を何度も練り直すこと。
唐代、都の長安に科挙を受けるためにやってきた賈島は、乗っているロバの上で詩を作っていた。
途中、「僧は推す月下の門」という一句を口ずさんでから、「推す」のほかに「敲く」という語を思いついて迷ってしまった。
彼は手綱をとるのも忘れ、手で門扉を押すまねをしたり、叩くまねをしたりしたが、なかなか決まらなかった。
あまりにも夢中になっていたので、向こうから役人の行列がやってきたのにも気づかず、その中に突っ込んでしまった。
さらに悪いことに、その行列は長安の都知事、韓愈の行列であったため、賈島はすぐに捕らえられ、韓愈の前に引っ立てられた。
彼は事の経緯をつぶさに申し立てた。優れた名文家であり、漢詩の大家でもあった韓愈は、賈島の話を聞き終わると、「それは『敲く』の方がいいだろう、月下に音を響かせる風情があって良い」と言った。
そして、二人は、馬とロバを並べていきながら詩を論じ合った。
このことから「文章を書いた後、字句を良くするために何回も読んで練り直すこと」を「推敲」という。