日々思うこと

父の残した膨大な短歌ファイルを繰る(その12)

冨田鋼一郎
[朝顔]

どのページの歌をみても、親父の面影、息遣いを感じる

2週間で便箋一枚に歌が埋まる(最初は鉛筆で、途中1988年からワープロになる)

びっしりと短歌が書かれた便箋を手渡されたときに、どうして感想を伝えることが出来なかったのか

毎日一首のペースを50年も続けたことに驚き

80歳当時の1995年からいくつか

○ 「阪神大震災」
 火の手あがるテレビ画面の中心に
  通信不通のわが支社の見ゆ
     (1995.1)

○同窓生ら持病もやむなき傘寿にて
  一病息災言いつつ別れぬ
     (1995.2)

○ 「オフィスの窓」
 帰り支度終えて眺むる窓越しに
  沈みゆく日の大き火の玉
     (1995.2 )
(注: まだ、大手町に勤務していた)

○ 「真夏の庭」
 蜻蛉二つ余所者ならずこの池に
  生まれ睦みて卵産むなる
     (1995.8)

○ 「柿」
 柿の実の今年は生り年枝たわみ
  一木千個の輝く鈴生り
     (1995.11)

○ 刈り上げし芝笹焚くにパチパチと
  音心地良し小春日和に
     (1995.11)

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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