骨董品

松村呉春「雪にあと」句紀梅亭画合作幅

冨田鋼一郎

雪にあとつけてもどるや年わすれ 月渓

季語:年忘れ(冬)

今年も歳末を迎えた。雪があたり一面を覆った夕刻だ。所用でどこかに出かけ、もどる家路で、ふと振り返ると自分のだどって来た足跡がくっきりと残っているではないか。今年もいろいろな事があったな。皆元気に歳末を迎えることができて何よりだ。温かい家に戻って、今夜は年忘れだ。

梅亭の描く画は、付き人を付けた人物が傘を持ち、振り返っている。

「雪にあと」は、「雪のあと」ではない。足跡をつけたのは、ほかでもない自分自身。雪にある足跡を振り返ることは、自分の来し方を振り返ることと同じである。ことに年末はそうである。思いが叶ったこと、叶わなかったこと。うれしいこと、悲しいこと。さまざまな出来事が脳裏をかけめぐる。来年こそは、息災を願って、年忘れといこう。

押印から紀梅亭の画であることがわかる。呉春、梅亭とも蕪村の画の門人。両者の合作はめずらしい。呉春はこの自句「雪にあと」が自慢だったようだ。この句を書いた多くの自筆作品が遺っている。

松村呉春(まつむら ごしゅん1752-1811)

江戸中期の画家。尾張の人。号月渓。

紀梅亭(きの ばいてい1734-1810)

江戸中期の画家。

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
記事URLをコピーしました