作品・本・人物紹介

蕪村の特徴ある人物表現(その7)

冨田鋼一郎

「童子図(おくのほそ道黒羽)」

蕪村は、芭蕉「おくのほそ道」を画巻として何本も描いた。

これは結城下館時代の作品。若い頃から「おくのほそ道」を読み込んでいたのだろう。

那須野黒羽の場面に登場する童子二人。蕪村は、この姉と弟を描いた。

「ちいさき者ふたり馬の跡したひてはしる。独(ひとり)は小姫にて名を「かさね」と云。聞なれぬ名のやさしかりければ、
⭕️かさねとは八重撫子の名成べし 曽良」

裸足で馬を追い駆ける子は継ぎ接ぎだらけ。背の伸びが速いので、衣服の丈が足りず、いつもつんつるてん。肩上げと腰上げして、背丈の伸びに応じて徐々にはずしていく。幼年期をこれ一つで着古す。

日に焼けてぷっくらとした頬。自然の中で育ち、はちきれそうに健康な幼児。こんな子らはそこらじゅうにいたはずだが、日本から消えてしまった逝き過ぎし光景。

子らの手の指に注目!簡略化した描き方だが、撫子の花束とおもちゃの棒をしっかりと手にしている。後年、蕪村がジャンルとして確立した俳画の手法の源がここにある。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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