日々思うこと

文京区立森鷗外記念館

冨田鋼一郎

今日、文京区立森鷗外記念館に行って来た。

ここには長年の大勢の人による研究の蓄積が詰まっている。新設の新宿区漱石記念館では歴史の差は及びもつかない。

今回の「鷗外遺産」は、書簡、原稿をふんだんに使っていて見応えがあった。

展示から書き留めた文章抜粋をいくつか。

「一寸舞台から降りて、静かに自分といふものを考へて見たい、背後(うしろ)の何物かの面目を覗いて見たい。(中略)此役が即ち生だとは考へられない。背後にある或る物が真の生てはあるまいかと思はれる。」(妄想)

鷗外50歳、『カズイスチカ』の直後に書いた『妄想』。もう一度読み直す。自分の決断でなく、周りのどうしようもない抗うことができないことで人間は生かされていく。

「舞台で見事に演じきった」人で思い出すのは、ロナルド・レーガン。

鷗外の抱いた「諦念」。鷗外、漱石だけでなく、明治を重層的に味わうには、子規、露伴、紅葉にももっと目を配りたい。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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