骨董品

蕪村の俳画 墨画彩色「蛙図」

冨田鋼一郎
H42.7 x W26.0 (cm)

紙本墨画淡彩
款記 「四明」
印  「四明山人」(朱文方印)
「淀水」(白文方印)

絵部分は、落款から20代後半から30代前半に過ごした結城下館時代のものと判明する。

 先(まず)うごく枝の目につく柳哉 九湖

柳の枝に飛びつこうとしている一匹のカエルの後ろ姿を大写しした。
僅かに覗く目、身体のイボイボ、無造作につけたような足指など細部にまで小さな生命(いのち)の躍動を感じ、網膜に焼き付いて離れない。
今日まで270年という長い時間が流れた。

「人生は短く、芸術は長し」。
これが芸術の(筆の)力というものだろうか。

九湖は、安永期の蕪村門下の俳人。

実はこの「蛙図」は、「安永三年春帖」(1774)に掲載された16枚の版画挿絵の原画。
挿絵では原画ては彩色されている柳が省かれている。
どうして25年も前に描いた蛙画を安永三年春帖で持ち出したのか。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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