骨董品

元政上人和歌短冊

冨田鋼一郎
H37.0 x W6.0 (cm)

ふしておもひおきてかぞふる万代ハ神ぞしるらむ我君のため 
         元政

日の本の御世はいったい幾世代にわたって続いていくのだろう。
神さまのみを知ることなのだろう。そのめでたさをは寝ても覚めても去らない。

元政上人は、秋草の和尚と呼ばれ、周囲から尊敬されていた和尚さん。
華美に流れることなく、実に流麗、端正な書で、短冊を手にとる者を思わず姿勢を正さしめる。

徳川家康が天下統一を果たし、ようやく世の中に平和が戻ってきた時代。芭蕉もこのような時代に誕生した。

「丈草となると澄徹し、透徹している。・・丈草に似た人といったら、元政上人でも持って来なければならないかもしれぬ。二人共に清らかで、二人共に病身で、二人共に四十で寂している。しかし元政の詩より丈草の句の方が、芸術品としてさらに高いところに行っていよう。ことに俗説でも、高尾との情事などの話が伝わらぬだけ、丈草の方がさっぱりしている。ただし丈草と元政では、沙門同士で付きすぎている。」

森銑三「柴田宵曲著『蕉門の人々』を読む」より
元政上人(げんせいしょうにん1623-1668)

江戸時代初期の日蓮宗を代表する高僧。京都伏見の深草に住したところから、深草の元政、艸(草)山和尚とよばれている。日蓮宗の宗学者、教育者として大きな功績を遺しているが、当代一流の詩人・文人としても著名である。
元政はこの草山で自ら信行に励むと共に、著作詩文を多くものにし、著名な文人墨客と交遊し、宗内外の碩学と道交を結んだ。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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