日々思うこと

「閑(しず)かに乱帙(らんちつ)を収めて疑義を思う」

冨田鋼一郎

読書に飽きる。
机辺だけでなく頭の中も乱雑になっているからだ。
頭の中がグルグルするから整頓したくなるが、消化不良のまま眠りにつく。

菅茶山「冬夜読書」
 閑収乱帙思疑義
 一穂青灯万古心

漱石『三四郎』
三四郎は勉強家というより彽徊家なので、割合書物を読まない。其代わりある掬すべき情景に逢うと、何遍もこれを頭の中で新たにして喜んでいる。その方が命に奥行がある様な気がする。今日も、何時もなら神秘的講義の最中に、ぱっと電燈が点く所などを繰り返して嬉しがる筈だが、母の手紙があるので、まずそれから片付け始めた。

☆☆☆

私にとって、「命に奥行がある様な気がする」ときはいつか。

書物の中に「掬すべき情景」に逢うと、ノートに書き留める。

時に、「あっ、この話はあの話とつながっているかもしれない」と、「ぱっと電燈が点く」。

散歩をしているとき、バイクに乗っているとき、友人と談笑しているとき閃くことがある。その時がやって来るのを待っている。

[西武池袋線豊島園駅前広場にて]

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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