墓参
冨田鋼一郎
有秋小春
読書に飽きる。
机辺だけでなく頭の中も乱雑になっているからだ。
頭の中がグルグルするから整頓したくなるが、消化不良のまま眠りにつく。
菅茶山「冬夜読書」
閑収乱帙思疑義
一穂青灯万古心
漱石『三四郎』
三四郎は勉強家というより彽徊家なので、割合書物を読まない。其代わりある掬すべき情景に逢うと、何遍もこれを頭の中で新たにして喜んでいる。その方が命に奥行がある様な気がする。今日も、何時もなら神秘的講義の最中に、ぱっと電燈が点く所などを繰り返して嬉しがる筈だが、母の手紙があるので、まずそれから片付け始めた。
☆☆☆
私にとって、「命に奥行がある様な気がする」ときはいつか。
書物の中に「掬すべき情景」に逢うと、ノートに書き留める。
時に、「あっ、この話はあの話とつながっているかもしれない」と、「ぱっと電燈が点く」。
散歩をしているとき、バイクに乗っているとき、友人と談笑しているとき閃くことがある。その時がやって来るのを待っている。
[西武池袋線豊島園駅前広場にて]