東ドイツ記念通貨5マルク白銅 未使用ライプチッヒ・トーマス協会図
冨田鋼一郎
有秋小春
見渡すや月に外山の花思ふ
星布
季語:月(秋)
外山(とやま):端の山。人里に近い山。⇔深山(奥深い山。おくやま。)
夕ぐれだろうか。家の中から月の出掛った周囲の山々を見渡してみる。人里近い山々にも秋一色の景色だ。
日々秋の深まりを感じるこの頃だが、ここらもこの春には満面の桜花で覆われていたなあ。春が待ち遠しいものだ。心の中で春と秋がつながる。
平明雅馴な筆致である。自然と四季を愛する女性らしいやさしい気持ちとともに、どこか孤閨のわびしさをも感じさせる。薄幸の裡に早くから出家の志を抱き、ようやく六十にして剃髪したのだが、その作品には全く宗教臭をとどめない。
星布の短冊はめずらしい。
江戸中・後期の俳人。初号は芝紅。初め白井鳥酔門、のち加舎白雄門。