第28回『シニアのための哲学 時代の忘れもの』鷲田清一
冨田鋼一郎
有秋小春
「秘密からの合図」
秘密と自立ー悲しみと喜びと
子供の成長過程で、ごく自然に起こる秘密
秘密を持つことと自立していくことは、密接な関係がある
身近な大人に言われた通りの生き方からちょっとはずれてみて、自分の力を試してみたくなる 言われた通りでいるだけではその子の発展はないわけです
そんなタイミングで象徴的な出来事(障害)が起こる 秘密は根本的なことを考えるきっかけとなる
秘密でみがきがかかるか、傷つくか
秘密は人を鍛える
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この宇宙のなかに子供たちがいる。これは誰でも知っている。しかし、ひとりの子供のなかに宇宙があることを、誰もが知っているだろうか。それは無限の深さと広がりを持って存在している。
大人たちは、子供の姿の小ささに惑わされて、ついその広大な宇宙の存在を忘れてしまう。
大人たちは小さい子どもを早く大きくしようと焦るあまり、子供たちのなかにある広大な宇宙を歪曲してしまったり、回復困難なほどに破壊したりする。
このような恐ろしいことは、しばしば大人たちの自称する「教育」や「指導」や「善悪」という名のもとになされるので、余計たまらない感じを与える。
私はふと、「大人になるということは、子供たちの持つこのような素晴らしい宇宙の存在を、少しずつ忘れ去っていく過程なのか」とさえ思う。
(河合隼雄『子どもの宇宙』)