読書逍遥第179回 『1492』 (その5)ジャック・アタリ著
冨田鋼一郎
有秋小春
広重「東海道五拾三次」33番目三河の「ニ川・猿ヶ馬場」ニ川宿
名物の柏餅の茶屋を前に三人の瞽女(ごぜ)が行く
瞽女は三味線を弾いて各地をめぐる盲目の女性
背景には背の低い松の木がポツンポツンと生えているだけ
緑が目に染みる光景とはほど遠い
「東海道五十三次」に描かれた背景を見てみると、神奈川、保土ヶ谷、平塚、大磯、小田原、箱根、岡部、島田、舞阪、日坂中山峠(にっさか)、白須賀などの山も丘もパラパラと松木が生えているだけだ
当時の東海道筋には鬱蒼とした木々はなく、貧相な植生が広がっていた
江戸中期には、森林資源の枯渇リスクが問題になってきた