読書逍遥第433回『日本史の謎は「地形」で解ける』【文明・文化編】(その7) 竹村公太郎著

『日本史の謎は「地形」で解ける』【文明・文化編】(その7) 竹村公太郎著
[今回のテーマ]
「縮み志向」の謎
「小型化」が日本人の得意技になったのはなぜか
日本人は何でも縮めてしまう
何故縮めるのか?
著者は日本の「縮み志向」の文化、技術が21世紀を救うという
[歩く人々]
3000年前、日本人は狭い沖積平野で稲作を開始した。平野は肥沃ではあったが、排水が悪い地帯。人々はこの沖積平野にへばりついて米を作った
山々に囲まれ、遠くを見通せない土地に生きていた日本人は、ことのほか情報好きで、旅行好きだった。
旅をするときには、山々を越え、海峡を渡り、川を横断し、湿地帯を歩いていかねばならなかった。馬や牛を利用したくても、日本列島の地形がそれを許さない。日本人は荷物を自分で担ぎ、自分の足で歩かねばならなかった。広重の「東海道五十三次」はその模様が描かれている。
いかにしたら、荷物を軽くできるか
情報を交換し、知恵を出し合った
→何でも縮めて小さくしたい
日本人は「かわいい」といっては、小さなものを愛した。かわいいものを作るため、細工して詰め込み、締める技術を生んできた。
(縮めた例)
丸い団扇→扇子
傘→折り畳み傘
ステレオ→ウォークマン
大型コンピュータ→電卓
大自然→日本庭園 盆栽
その他 茶室 幕内弁当 おにぎり 俳句
日本人の縮み思考は、人々の美意識にまでなっていった
これに反するものを、「不細工」「詰まらないやつ」という
[未来を救う日本人]
21世紀は地球規模で環境は激変し、エネルギー資源が枯渇していく。エネルギーを最小にする持続可能な社会の構築は不可避である。
その持続可能な社会は、人々の倫理や道徳では決して達成されない。なぜなら、倫理や道徳が有効なのは、ある限られた共同体の内側だけだからだ。
今ある危機は地球規模である。
この地球には無数の共同体がある。無数の共同体が関係する局面で、倫理や道徳を持ち出すと、問題を複雑にして迷路に入り込んでしまう。
倫理や道徳から最も遠い武器、それは「技術」
この「縮める技術」こそがエネルギーを最小にする持続可能な社会を可能にする。
21世紀の人類の航海の羅針盤は、小さきものを愛する日本文明となる。
