読書逍遥第233回 『オホーツク街道』(その3) 街道をゆく38 司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
③ レパントの海戦後
1千年の歴史を誇るヴェネツィア共和国も、1453年のビザンチン帝国の滅亡によって歴史の主人公に踊り出たトルコ帝国も、レパントの海戦を機に、衰亡の一途をたどることになる
両国の力が衰えただけが、原因ではない。両国の活躍の場であった地中海の重要度が16世紀を境にして減少したからである
これ以降の重要な海戦が、地中海以外の海で行われるようになったと言う事はそのことも何よりもの証明であろう
ヴェネツィアはともかく70年の平和を享受できることになった。
その結果は、西欧第一の富裕と華麗の競演となる。外国からの賓客を迎えて繰り広げられるサンマルコ広場での祝祭行列では、総額1千万デュカートと見積もられる美術工芸品が、終わりがないかと思われるくらいに次々と繰り出されるのであった。
他国からの人々は改めてヴェネツィアの富に目を見張る。その中には1585年、レパントの海戦から14年後にヴェネツィアを訪れた日本からの天正少年遣欧使節の一行もあった。
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会津八一記念博物館所蔵の前田青邨大作「羅馬遣欧使節」を思い出す
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歴史の大きなうねりの波に揉まれる人間模様を繰り広げて見せてくれた
司馬遼太郎の時代小説のような爽やかな読後感に包まれる