読書逍遥

読書逍遥第421回『レパントの海戦』塩野七生著 (その4)

冨田鋼一郎

『レパントの海戦』塩野七生著 (その4)

③ レパントの海戦後  

1千年の歴史を誇るヴェネツィア共和国も、1453年のビザンチン帝国の滅亡によって歴史の主人公に踊り出たトルコ帝国も、レパントの海戦を機に、衰亡の一途をたどることになる

両国の力が衰えただけが、原因ではない。両国の活躍の場であった地中海の重要度が16世紀を境にして減少したからである

これ以降の重要な海戦が、地中海以外の海で行われるようになったと言う事はそのことも何よりもの証明であろう

ヴェネツィアはともかく70年の平和を享受できることになった。
その結果は、西欧第一の富裕と華麗の競演となる。外国からの賓客を迎えて繰り広げられるサンマルコ広場での祝祭行列では、総額1千万デュカートと見積もられる美術工芸品が、終わりがないかと思われるくらいに次々と繰り出されるのであった。

他国からの人々は改めてヴェネツィアの富に目を見張る。その中には1585年、レパントの海戦から14年後にヴェネツィアを訪れた日本からの天正少年遣欧使節の一行もあった。

☆☆☆

会津八一記念博物館所蔵の前田青邨大作「羅馬遣欧使節」を思い出す

@@@@

歴史の大きなうねりの波に揉まれる人間模様を繰り広げて見せてくれた

司馬遼太郎の時代小説のような爽やかな読後感に包まれる

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
記事URLをコピーしました