読書逍遥

読書逍遥第419回『疲れすぎて眠れぬ夜のために』(その3) 内田樹著

冨田鋼一郎

『疲れすぎて眠れぬ夜のために』(その3) 内田樹著

② レパントの海戦とその後

1571年5月、神聖同盟(法王主唱のヴェネツィア共和国、スペイン王国主体の対トルコ連合艦隊) 難産の末の結成

1571年10月7日、レパントの港を出てパトラス湾の戦場、両軍合わせて五百隻の船の十七万の人間が正面から衝突

海軍史上、ガレー船同士の海戦としては、最大の規模で闘われ、かつ最後の戦闘となる「レパントの海戦」

1453年のコンスタンチノープル陥落から118年、トルコ攻勢に次ぐ攻勢の前に、全力を投ずる抵抗となるとほとんど一度としてなかったキリスト教勢がはじめて獲得した真物の勝利だった

これは十字架を先頭にして闘われた最後の戦闘でもある

西ヨーロッパのほうが世界の中心になり、反対に地中海世界は歴史の主人公の座を降りることになった

ガレー船に代わって、帆船の時代への移行でもあった

1千年の歴史を誇るヴェネツィア共和国も、1453年のビザンチン帝国の滅亡によって歴史の主人公に踊り出たトルコ帝国も、レパントの海戦を機に、衰亡の一途をたどることになる

両国の力が衰えただけが、原因ではない

両国の活躍の場であった地中海の重要度が16世紀を境にして減少したからである

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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