情報過多の時代に生きる
冨田鋼一郎
有秋小春
言葉はこのようにして受け継がれてゆく
☆☆☆☆☆
李渉 「題鶴林寺」
終日昏昏酔夢閑
忽聞春尽強登山
因過竹院逢僧話
又得浮生半日閑
終日昏々たり 酔夢の閑
忽ち春尽くると聞いて 強ひて山に登る
竹院を過ぎるに因りて 僧に逢って話り
又得たり 浮生半日の閑
題「鶴林寺」(唐・李渉)
蘇東坡は、僧・仏印を訪ねて半日を過ごし、「半日の閑を得たり」と詩を口ずさんだところ、仏印は、「学士は、半日の閑を得たでしょうが、拙僧は半日を忙了した」と言い、二人は大笑いした。
I spent the whole day drowsy.
I heard that spring was over.
So I climbed a mountain.
At a temple in the bamboo forest,
I met a priest and talked to him.
Thanks, I got a half-day vacation in a dull life.
☆☆☆
芭蕉
○半日は神を友にや年忘れ
芭蕉 『嵯峨日記』より
独住(ひとりすむ)ほどおもしろきはなし。長嘯(ちょうしょう)隠士の曰く、「客は半日の閑を得れば、あるじは半日の閑をうしなふ」と、素堂此言葉を常にあはれぶ。
予も又、
○うき我をさびしがらせよかんこどり
とは、ある寺に独居して云し句なり。
☆☆☆
長嘯士(ちょうしょうし)
やがて爰(山居の一室)を半日とす。客はその閑かなることを得れば、我はその閑かなることを失ふに似たれど、思ふどちの語らひはいかでむなしからん
☆☆☆
蕪村
○半日の閑を榎(えのき)やせみの声
蝉も榎を忘れて半日の閑を得たかのように鳴いている。自分も今日はその鳴き声を聞きつつ、半日の閑を得た。
榎(えのき) 閑を「得」と掛ける