読書逍遥

読書逍遥第393回『ローマ世界の終焉』(中下)(その2) 塩野七生著

冨田鋼一郎

『ローマ世界の終焉』(中下)(その2) 塩野七生著

[パックスロマーナのこと]

ローマ主帝国導による平和は、長年にわたって、しかも広大な帝国の全域にわたって維持されたのだからスゴイ

ヨーロッパと北アフリカと中近東にまたがり、二百年にわたって戦争がなかったという一事だけでも、あれから二千年が経っていながらタメ息が出る

ローマ帝国の隆盛と衰亡のパターン
 ①高度成長興隆期
 ②安定成長期
 ③衰退期

歴史上に現れては消えていった国家のほとんどは、②安定成長期を経ずして、興隆した後はすぐに衰退に向かっている

興隆期と衰退期の中間に長年に及ぶ安定成長期までも持てた国家は少ない

それ故か、長命を保った国家は必ず安定成長期を持っている

中世ルネサンス時代のヴェネツィア共和国も、古代のローマ帝国も然り

思い返せば、17、18世紀に全盛期を迎えたポルトガルは、1755年のリスボン大地震を境に、覇権をあっという間にオランダに譲ることになった

パックストクガワーナ(徳川江戸幕府)はそれに近い

身近には、戦後の日本も、高度成長の険しい坂を一気に登り詰め、すぐに長期衰退へ急坂を下り始めてしまった

ここではローマ帝国のような長期にわたる安定成長期というものが欠けている

首都直下型地震と聞くと、日本はリスボンの二の舞になるのではと危惧する

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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