読書逍遥第405回『すべての道はローマに通ず』(その4) 塩野七生著
冨田鋼一郎
有秋小春
[パックスロマーナのこと]
ローマ主帝国導による平和は、長年にわたって、しかも広大な帝国の全域にわたって維持されたのだからスゴイ
ヨーロッパと北アフリカと中近東にまたがり、二百年にわたって戦争がなかったという一事だけでも、あれから二千年が経っていながらタメ息が出る
ローマ帝国の隆盛と衰亡のパターン
①高度成長興隆期
②安定成長期
③衰退期
歴史上に現れては消えていった国家のほとんどは、②安定成長期を経ずして、興隆した後はすぐに衰退に向かっている
興隆期と衰退期の中間に長年に及ぶ安定成長期までも持てた国家は少ない
それ故か、長命を保った国家は必ず安定成長期を持っている
中世ルネサンス時代のヴェネツィア共和国も、古代のローマ帝国も然り
思い返せば、17、18世紀に全盛期を迎えたポルトガルは、1755年のリスボン大地震を境に、覇権をあっという間にオランダに譲ることになった
パックストクガワーナ(徳川江戸幕府)はそれに近い
身近には、戦後の日本も、高度成長の険しい坂を一気に登り詰め、すぐに長期衰退へ急坂を下り始めてしまった
ここではローマ帝国のような長期にわたる安定成長期というものが欠けている
首都直下型地震と聞くと、日本はリスボンの二の舞になるのではと危惧する