読書逍遥

読書逍遥第390回『寒山拾得』森鷗外著

冨田鋼一郎

『寒山拾得』森鷗外著

寒山と拾得は、天台山国清寺に住み、豊干(ぶかん)禅師に師事したといわれる唐代の伝説上の人物

主人公は閭丘胤(りょきゅういん)が天台山国清寺に豊干・寒山拾得を訪ねる話

寒山拾得の脱俗の境地は、仏教に通じるものとして、中国や日本で伝統的な画題として数多く描かれてきた

寒山は文珠菩薩、拾得は普賢菩薩とされる

不思議な余韻を残す短編

(末文)

「実はパパア(森鴎外)も文珠なのだが、まだ誰も拝みに来ないのだよ」

われわれにとっては中国文化・歴史がどれだけ裨益するところが大きかったか

そういえば芥川龍之介にも「寒山拾得」のエッセイがあった

[拾得詩]
可笑是林泉 數里少人煙   
雲從巖嶂起 瀑布水潺潺
猨啼暢道曲 虎嘯出人間   
松風清颯颯 鳥語聲關關
獨歩繞石澗 孤陟上峯巒   
時坐盤陀石 偃仰攀蘿沿
遥望城隍處 惟聞閙喧喧 

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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