第95回『中世ヨーロッパ全史』上下ダン・ジョーンズ著
冨田鋼一郎
有秋小春
寒山と拾得は、天台山国清寺に住み、豊干(ぶかん)禅師に師事したといわれる唐代の伝説上の人物
主人公は閭丘胤(りょきゅういん)が天台山国清寺に豊干・寒山拾得を訪ねる話
寒山拾得の脱俗の境地は、仏教に通じるものとして、中国や日本で伝統的な画題として数多く描かれてきた
寒山は文珠菩薩、拾得は普賢菩薩とされる
不思議な余韻を残す短編
(末文)
「実はパパア(森鴎外)も文珠なのだが、まだ誰も拝みに来ないのだよ」
われわれにとっては中国文化・歴史がどれだけ裨益するところが大きかったか
そういえば芥川龍之介にも「寒山拾得」のエッセイがあった
[拾得詩]
可笑是林泉 數里少人煙
雲從巖嶂起 瀑布水潺潺
猨啼暢道曲 虎嘯出人間
松風清颯颯 鳥語聲關關
獨歩繞石澗 孤陟上峯巒
時坐盤陀石 偃仰攀蘿沿
遥望城隍處 惟聞閙喧喧