読書逍遥第253回『北のまほろば』街道をゆく(その3) 司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
原題
BEING HUMAN
How Our Biology Shaped World History
面白く、楽しみながら読んだ
人類史を、帯文にあるとおり、”肉体をもった生物としての人類”の壮大な歴史として捉える
生物学的視点を取り入れたことで、無味乾燥になりがちな歴史が生き生きと蘇る
(おわりに)
本書では、生来の人間らしさが、歴史にどのように決定的な影響を及ぼしたかを探求してきた。
人の心理学的ソフトウェアが、社会生活や利他主義を発達させ、協力が広まったおかげで、人間は文明という組織的で壮大な事業に乗り出すようになった。
ヒトの特異な生殖行動が人間の家族をどう生み出してきたのか、そしてさまざまな王朝が世継ぎを確実に残すという問題にどう対処してきたかを見てきた。
人間が感染症に弱いことも、風土病がもたらした波及効果や、パンデミックの猛威についても論じてきた。
人口統計の威力や、人間集団の大規模な特性のほか、精神活性物質を利用して意識体験を変えたがる傾向がもたらした結果も探求してきた。
ヒトのDNAにある欠陥遺伝子が歴史におよぼした結果の具体例も見た。
最後に、僕らの行動に影響するたくさんの認知の誤作動やバイアスも見てきた。
人類史は、種としてのヒトの能力と欠陥のあいだで釣り合いを保ちながら展開してきた。
しかし、人間は、自分たちの生態の非力な奴隷となってきたわけではない。
人間の技術的な進歩は、自分たちの自然の潜在能力を強化し向上させ、生物学的な欠陥を多くを補い、克服するために努力してきた物語なのである。