読書逍遥

読書逍遥第388回『勇気論』(その3)内田樹著

冨田鋼一郎

『勇気論』(その3)内田樹著

「勇気、正直、親切」を巡って、往復書簡形式で哲学的に考えていく

著者の思索に導かれて、「勇気、正直、親切」が結びつき、ひいては自分の(呼ばれている)ミッションを考えるヒントを得る

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・勇気とは、「孤立に耐える」ための資質である

・「孤立に耐える」ということは、人間にとって、とても困難な、しかし重要な営みである

・「ちょっと助けて」の他者の声と「ちょっと手を貸してくれないか」という主の声が聞こえなくなると、「自分を呼ぶ声」も聴こえなくなる

・「孤立に耐えることのできる人は、他者の他者性に耐えることができる」

・理解も共感もできない他者を前にしたときに、それを「人間ではない」とか、「忌まわしいもの」とかいうふうにラベルを貼って分類・処理することは自制する
そして、しばらくの間の「判断保留」に耐える勇気を持つ

・人間の暴力を駆動しているのは、「なんだかわからないもの」に対するこの嫌悪と恐怖である

あらゆる戦争も、差別も、ジェノサイドも、起源までたどると、「他者が他者であることの不快」に耐えられない(勇気のない)人間の弱さにたどり着く

勇気はこの弱さとまっすぐに向き合い、自分を少しずつ強くするための足場です。
他者が他者であることに耐えることのできる力です。
この力を僕は勇気と呼びたい。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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