読書逍遥第231回 『オホーツク街道』(その1) 街道をゆく38 司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
「世界 知の旅」シリーズ9
責任編集 森本哲郎
見るだけの旅から、共感する旅へ
旅を深める新しいガイド
まだ東西ドイツに分かれていたころに出版された本である
(まえがき)
どんな国にも、その国を代表する、いや、象徴するという方がいい、人間像がある。その人間像はたいてい、その国の作家によって鮮やかに描き出されている。
イギリスならシェイクスピアの『ハムレット』。スペインならセルバンテスの『ドン・キホーテ』といったふうに。ドイツにそれを求めるなら、ゲーテの『ファウスト』を挙げることにだれも異論はないだろう。ドイツ的性格は、ファウストに結晶しているといってもいい。
ファースト的な人間とは、ひたすら何かを求めようとする、そして、求めようとするがゆえに迷わざるを得ない。そのような精神の持ち主である。
ゲーテはこういっている。
「人間は、努力するかぎり迷うものだ」
そして、そのような魂を育てたのは、かつて深い森におおわれていたゲルマニアの風土だった。
ドイツはいまも森の国である。その森からベートーヴェンも、グリムも、カントも生まれたのである。
では、ひとつ、その深いドイツの森に分け行ってみようではないか。
☆☆
(古典的名著アンソロジー)
ニーチェ、グリム童話集、モーツァルト、ベートーヴェン、ゲーテファウスト、ショーペンハウエル、ユゴー、トーマス・マン、ツヴァイク