読書逍遥

読書逍遥イタリア(その2)『永遠の美の光芒』1986刊行

冨田鋼一郎

イタリア(その2)『永遠の美の光芒』1986刊行

「世界 知の旅」シリーズ5
責任編集 森本哲郎

世界を旅する時、必携のガイドブック

見るだけの旅から、共感する旅へ
旅を深める新しいガイド

イタリアはヨーロッパの”原点”である。すべての道がローマへ通じていたように、ヨーロッパの歴史も古代ローマへとつながっているのだ。

とすれば、イタリアを知ることなくしてヨーロッパは理解できないといってもいいであろう。イタリアはヨーロッパ文化を解く”鍵”なのである。

塩野七生氏のイタリア評は面白い

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森本哲郎氏
イタリアという国は、ギリシャのように都市国家の伝統を継いで、ベネチアがあり、フィレンツェがあり、ナポリがあり、それぞれの形で独立しているし、地形的にも非常に複雑で変化に富んでいる。
だから、まとまらずに離合集散を繰り返す。ところが、実はそういうところに文化というのは生まれるんじゃないか。

塩野七生氏
イタリアは様々な人種の混ざり合いの国
例えば、シチリア島。

古代では東半分はギリシャの植民地、西半分はカルタゴの影響下にあった。

アラブに征服されていた時代もあったし、スペインやフランス人も入ってくる。イタリアは民族の混血の地なのですね。

だから第二次大戦時に三国同盟を結んだとはいえ、ヒトラーに民族の純潔だのと言われたら、イタリア人たちはもうシラけちゃいますよ。イタリアでユダヤの血が入ってない家を探す方が難しいくらいです。

イタリア人はもともと批判精神が盛んなものですから、ドイツ民族みたいにひとつの号令のもとに突っ走れないんです。だからイタリアにいたユダヤ人はあまりひどい目に合わなかったんですね。

「イタリアはあらゆることで非難できる。だらしがない。汽車は定刻に来ない。汚れている。うるさい。ただし退屈だという評価だけは絶対にされない国である」

きれいに整ったのが好きな人には本当に耐えられないんじゃないでしょうか?

森本哲郎氏
イタリア気質というものもありますね。どうしてあんなに陽気でいられるのかな。

塩野七生氏
自分から離れた視点で自分を見られるから、陽気なんですね。自己批判の精神が非常に旺盛です。

しかも古代ローマ以後は法王庁がありましたね。あれは良きにつけあしきにつけ、いろいろ影響したわけです。

法王庁を持つということは、一種の中心をもつということですね。つまり精神的な意味で本当の都会っ子です。だからかつて世界の中心にいた人たちだけが持てる余裕がある。

それもあって、フランス人のようないわゆる中華思想を持っていませんでした。

いろいろなことをそれぞれが人生の一面であるというような生き方で行くから、陽気に見えるんじゃないでしょうか。

日本人に言わせれば軽薄である、となるけれども、その軽さは相当冷めた精神の結果ではないかと思うんです。

無知の結果ではなくてね。だから大人なんですね。

それからもう一つ、ヨーロッパは階級社会だと言いますが、やはりイタリアも階級社会じゃないか。

例えば、スパゲッティーの食べ方です。日本のレストランでスプーンがついていることがありますね。スプーンの中で丸めて食べるのが良いように思われてますが、あれは完全に下層階級の食べ方です。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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