読書逍遥

読書逍遥第376回『サピエンス全史』ユバリ・ノア・ハラリ著

冨田鋼一郎

『サピエンス全史』ユバリ・ノア・ハラリ著

副題 文明の構造と人類の幸福
原題 Sapiens
A Brief History of Humankind

膨大な世界史を楽しみながら読んだ
優れたストーリーテラーだ

☆☆☆

「歴史を学ぶ意味」について

私たちはなぜ歴史を研究するのか?
歴史は、物理学や経済学と違い、正確な未来を予想をするための手段ではない。

歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を広げ、現在の私たちの状況は、自然なものでも必然的なものでもなく、したがって、私たちの前には、想像しているよりも、ずっと多くの可能性があることを理解するためだ。

☆☆☆

歴史の選択は、人間の利益のためになされるわけではない。

歴史が歩を進めるにつれて、人類の境遇が必然的に改善されるという証拠は全くない。

キリスト教の方がマニ教よりも優れた選択肢だったとか、アラブ帝国の方がササン朝ペルシャ帝国よりも有益だったと言う証拠もない。

歴史が人類の利益のために作用しているという証拠がないのは、そのような利益を計測する客観的尺度がないからだ。

何が良いかと言う定義は文化によって異なるし、良さを選べる客観的な物差しもない。

もちろん勝者はいつも自分の定義が正しいと信じるが、なぜ勝者の主張を信じなければならないのか?

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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