読書逍遥第136回 『生き方の研究』森本哲郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
森本哲郎さんの本を読んで、たくさんの古今東西の歴史・人物・書物を知ったような気になっている
こんなに安直に学んだ気になっていいのか
たとえば、ギリシャ神話、ヘロドトス、セルバンテス、カント、シェイクスピア、ハイデガー、ニーチェ、トインビー、ドストエフスキー、孔子、陶淵明、吉田兼好など
ゲーテの「ファウスト」も知ったつもりに
☆☆☆☆
「迷い」について
ああ、おれの胸には、二つのたましいが住んでいる。そのふたつが折り合うことなく、互いに相手から離れようとしている。
(ゲーテ 「ファウスト」)
神は、怠けがちで、すぐに絶対的な安息を求めたがる、人間たちを刺激するために、悪魔メフィストフェレスをつけておく
人間に二つの魂の葛藤で迷わせるためだ
善と悪
情熱(パトス)と理性(ロゴス)
感性と知性
感能と精神
俗と聖
「迷う」ことの積極的な意味
⭕️[迷わぬ人間は、怠惰な人間だ]
なぜなら、そういう人は、だれの胸のうちにもあるあの二つの魂に気がつかず、気がついても、ただ眠らせておくだけだから
⭕️[迷わぬ人間は、傲慢な人間だ]
なぜなら、何の努力もせずに、神のような安息の中にいられると思いあがっているから
⭕️[迷わぬ人間は、臆病な人間だ]
なぜなら、自分の中にあるふたつの魂が争うことを恐れ、ただひたすら常識に従って大過なくなく、一生終えようと願っているから
メフィストフェレスに誘惑され、それと争い、それを克服しようとする過程こそが人生だ
迷いに直面することこそ、人生の、自分自身の歴史の原動力ではないか