読書逍遥

読書逍遥第360回『ことばへの旅』(その1) 森本哲郎著

冨田鋼一郎

『ことばへの旅』(その1) 森本哲郎著

森本哲郎さんの本を読んで、たくさんの古今東西の歴史・人物・書物を知ったような気になっている

こんなに安直に学んだ気になっていいのか

たとえば、ギリシャ神話、ヘロドトス、セルバンテス、カント、シェイクスピア、ハイデガー、ニーチェ、トインビー、ドストエフスキー、孔子、陶淵明、吉田兼好など

ゲーテの「ファウスト」も知ったつもりに

☆☆☆☆

「迷い」について

ああ、おれの胸には、二つのたましいが住んでいる。そのふたつが折り合うことなく、互いに相手から離れようとしている。
(ゲーテ 「ファウスト」)

神は、怠けがちで、すぐに絶対的な安息を求めたがる、人間たちを刺激するために、悪魔メフィストフェレスをつけておく

人間に二つの魂の葛藤で迷わせるためだ
 善と悪
 情熱(パトス)と理性(ロゴス)
 感性と知性
 感能と精神
 俗と聖

「迷う」ことの積極的な意味

⭕️[迷わぬ人間は、怠惰な人間だ]
 なぜなら、そういう人は、だれの胸のうちにもあるあの二つの魂に気がつかず、気がついても、ただ眠らせておくだけだから

⭕️[迷わぬ人間は、傲慢な人間だ]
 なぜなら、何の努力もせずに、神のような安息の中にいられると思いあがっているから

⭕️[迷わぬ人間は、臆病な人間だ]
 なぜなら、自分の中にあるふたつの魂が争うことを恐れ、ただひたすら常識に従って大過なくなく、一生終えようと願っているから

メフィストフェレスに誘惑され、それと争い、それを克服しようとする過程こそが人生だ

迷いに直面することこそ、人生の、自分自身の歴史の原動力ではないか

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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