読書逍遥

読書逍遥第358回『文明の庫(くら)』上巻 芳賀徹著

冨田鋼一郎

『文明の庫(くら)』上巻 芳賀徹著

日本の18世紀は今日から見て、まことに面白い文化人・画家に満ち満ちている。

貝原益軒 新井白石 荻生徂徠 本居宣長 三浦梅園 本多利明 尾形光琳 上田秋成 与謝蕪村 菅茶山 池大雅 伊藤若冲 
曾我蕭白 鈴木春信 鳥居清長 鶴屋南北
平賀源内 喜多川歌麿
など錚々たる名前が並ぶ
⭕️湯上りや世界の夏の先走り 李山

注: 平賀源内(1728-1780) 号:李山

当時の人々のいう「天下泰平」あるいは「御静謐」、今日の私の呼んでいう「徳川の平和(パックストクガワーナ)」の、そのただなかの日本列島に、一体なぜあれほどの大量の独創的な、風変わりな、知・情・意それぞれにおいて、力量ゆたかな、一言でいえば面白い人物が西にも東にも輩出しえたのか。

その事実はそれ自体、現代の日本にとってもきわめて興味深い問題たりえよう。

21世紀の日本が文化の面でも、なお世界に誇りうるものを持っているとすれば、その多くはむしろ、この錯国下の18世紀人たちの仕事に負うている、とさえいえるほどではなかろうか。

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夏目漱石は、司馬江漢随筆集に読み耽っていたらしい。明治24年8月3日、盟友正岡子規に宛てて「古人に友を得たる心にて愉快に」と書いた。

「司馬江漢の春波楼筆記を読み候が、書中往々小生の云わんと欲することを発揮し、意見の暗合する事間々有之。図らず古人に友を得たる心にて愉快に御座候」

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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